ドリアン(学名: Durio zibethinus)はアオイ科(クロンキスト体系や新エングラー体系ではパンヤ科)に属する樹木。また、その果実。
学名のDurio=ドリアン属であり、このラテン語のもとになったdurianという言葉は、もともとマレー語で、刺(duri: ドゥリ)を持つものという意味である。また、種名のzibethinusというのは、「麝香の香りを持つ」という意味の形容詞である。合わせて、麝香の香りを持ち、針を持つものという意味になる。マレー語ではドゥリアン。タイ語ではトゥリアン (ทุเรียน)。北京語で榴蓮(拼音: liúlián、リウリエン)、広東語ではラウリーン(lau4lin4)。
代表的なドリアンと呼ばれる栽培種の学名はDurio zibethinus、その他にも分かっているだけで30の種が存在する。原産地は東南アジアのマレー半島。果実は強い甘味を持ち、栄養豊富(特にビタミンB1を多く含有)なため、国王が精力増強に食していた。ゆえに王様の果実と呼ばれていた[要出典]が今日では果物の王様と呼ばれている。
ドリアンの木は、高さが 20 - 30 m ほどになる(果樹園では10 m程度に抑えられる)常緑樹でピラミッド状の樹冠を作る。枝は細かく、葉は互生する。葉の表面は緑暗色で光沢があり、長さ10 - 18 cm、幅 5 cmほどの長楕円形。
花は、黄白色で5つの花弁を持ち、果梗に数個から数十個ほど群生させる。
果実は、受粉後3カ月ほどで成熟し、大きさは20 - 30 cmほど、重さは1 - 5 kgほどになる。植樹後、5年程で収穫できるようになる。1本の木から1年で100 - 200個が収穫される。灰緑色をしており、外皮は革質で全体が硬い棘に覆われている。内部は5室からなり、各室に2-3個の種子がある。可食部は甘い香りとともに、玉ねぎの腐敗臭または都市ガスのような強烈な匂いを放つ。ドリアンの香り成分として分かっているだけでも、エステル、アルコール、アルデヒドに属する26種類の揮発成分、および8種類の硫黄化合物が存在する。強烈な臭いの元は臭い成分の一つ硫黄化合物1-プロパンチオールC3H7SHが核となり、その他さまざまな臭い成分が複雑に絡み合い作り出されている。
2017年、ドイツの研究者らは、ドリアンの特徴的な芳香がethyl (2S)-2-methylbutanoate(フルーティーな匂い)および1-(ethylsulfanyl)ethane-1-thiol(炒めた玉ねぎのような匂い)の2つの成分をドリアン中に存在する比率で混ぜ合わせることで再現できることを明らかにした[3]。2017年10月9日、シンガポールの科学者チームは、ドリアンの臭いの元が、「成熟する過程で発生する揮発性の硫黄化合物」であることを発表した[4]。
食べられるのは、種子の周りのクリーム状の部分で、果実全体に占める可食部分の割合は少ない。種子は焼くか茹でることで食べることが可能である。種子の食用はドリアンの産地でごく稀に行われるが、あまり一般的ではないため、ほとんどの場合に廃棄される。
沖縄県にドリアンの木が植栽されている。開花することはあるものの、結実にまで至ることは非常に稀である。
ドリアンの果実は臭いが強烈なため、飛行機内への持込みが禁止されている。公共の建物やホテルも、持ち込み禁止にしている所が多い。
その強烈な臭いが「生ゴミ」と例えられることもある。
近年タイではMon Thong(モントーン)という臭いを抑えた改良品種が作られ流通している。
中国では広州を中心に「榴蓮酥」というドリアン・パイとして通常食されており、レストランなど料理店でも一般的なメニューとなっている。クリーム状にしたドリアンをパイ生地で包んで焼き上げたもので、外見は春巻きに似ているほか、特有のにおいもほとんど抑えられて食べやすいように調理されている。
東南アジアではドリアンを食べるとき飲酒すると死に繋がると信じられている。古くは18世紀に書かれた文献にも登場する。腹内での異常発酵によるガス説、または高カロリーのドリアンとアルコールによる急激な高血糖説など様々な俗説がある。これまでにドリアンと飲酒による因果関係が証明された死亡事故は報告されていない。医学的な調査もされているが、食べ合わせにより死亡に繋がる要素は発見されておらず、ドリアンとアルコールの食べ合わせ説は迷信とされている。ネズミを使った実験では死亡例がなかったという報告がある。