他絶滅属多数
ペッカリー(西: pecarí、英: Peccary)は、鯨偶蹄目ペッカリー科に属する哺乳類の総称。ペッカリー科の現生種はクチジロペッカリー、クビワペッカリー、チャコペッカリーの3種からなる。ペカリーとも呼ばれる。また、スペイン語ではハベリーナ (javelina) とも呼ばれる。和名はヘソイノシシ(臍猪)。
ペッカリー科は南北アメリカ大陸において、他の大陸のイノシシ科と同様のニッチを占める。現生種は、クチジロペッカリーがメキシコからパラグアイにかけて熱帯雨林の奥深くに生息する。クビワペッカリーはアメリカ合衆国南西端からアルゼンチンまでの砂漠、森林、熱帯雨林に見られる。チャコペッカリーは名前に示されているように南米南部のグランチャコに分布する。しかし現在、人為的に持ち込まれたイノシシ類が新大陸において繁殖、ペッカリーの分布を脅かしつつある[1]。
漸新世の北アメリカに既知で最古のペッカリー、ペルコエルスが現れ、以降中新世から鮮新世にかけて適応放散していく。この時現れた系統は大きく二つに分けられる。一つはプロステノプスに代表される長い頭骨と張り出た頬骨弓を特徴とするものである、この系統は一時期繁栄したものの、更新世で途絶えている。もう一つは現生群を含むもので、頭骨の高さがあり、前後に短く横稜線をもつ大臼歯を特徴とする[2]。更新世にはこの系統のプラティゴヌスなどがパナマ地峡を超えて南アメリカ大陸に侵入、分布をひろげている[3]。
成体で体長90-130センチメートル、体重20-40キログラムに達する。全体の印象としてイノシシ科に似るが、四肢は長めで肢端の指が二本になるなどより走行に適した形態となっている[3]。頭骨はイノシシに比べてやや短くて高さがある。犬歯は湾曲せずに伸び、大臼歯の形も比較的単純である[2]。
日本ではペッカリーを「ヘソイノシシ」とも称するが、それは、ペッカリーの背中に臍のような構造物が見られるからである。ただしこれは実際には、一種の臭腺で、麝香のような臭いを出すことによって仲間同士の意思疎通を図っている。彼らは少ないときは5頭、多いときには100頭を越す群れを形成するが、群れのリーダーのような制度はなく、この臭腺を使うことで協調性を高めている。群れの個体同士で毛づくろいのときに相手の臭腺に自分の喉や肩をこすり付けあうという「においを分かち合う行動」によって、群れの行動圏や仲間を認識している。
ペッカリーの群れがジャガーなどの捕食者に襲われた場合、群れの中の1頭が捕食者へ向かっていき、残りの者は逃走する。リチャード・ドーキンスの利己的遺伝子説によって説明される動物行動のひとつと考えられている。
革製品の材料として有名で、毎年10万頭以上の野生のペッカリーが捕獲されている。
†は絶滅