有爪動物(ゆうそうどうぶつ)は、動物の一種で、有爪動物門 (Onychophora) を形成する。
現生の動物ではカギムシ目 (Euonychophora) だけしかなく、森の落ち葉の下などに棲んでいるカギムシ類のみが知られている。
細長くて柔らかい動物である。全身は赤褐色、黒、緑など様々だが、黒紫色のものが多いらしい。発見当初はナメクジの1種として記載された。
体は細長く、やや腹背に扁平、背面は盛り上がり、腹面は平らになっている。全身がビロード状の柔らかい皮膚に覆われる。頭部には1対の触角があり、その基部には眼がある。頭部の下面には口があって、その側面に1対の付属肢がある。
頭部以降の胴体には、対を成す付属肢が並ぶ。付属肢は円錐形に突出し、先端には鈎爪がある。腹部末端に肛門がある。生殖孔は最後の附属肢の間の腹面中央か、もう一つ前の附属肢の間に開く。
呼吸は気管によって行われる。体表のあちこちに気門が開き、その内部にはフラスコ型の気管嚢がある。気管はここから2-3本が体の内部へと伸び、それらは互いに癒合することがない。
カギムシは雌雄異体で、体内受精によって生殖する。雄は精包を雌の体表に貼り付け、精子はその皮膚を貫いて雌の体に侵入し、卵を受精させる。卵を産み出す場合と、体内で孵化するものがある。また、一部の種では胎盤が形成される胎生を行う。
熱帯多雨林の地表や朽ち木の中などに生息する。肉食性で、小型の昆虫等を捕食する。餌をとるときは口のそばにある粘液腺から白い糸のように見える粘液を噴出し、これを獲物に引っかけて動けなくする。場合によっては30cmほども飛ぶ。この粘液は防御のためにも使われる。
はしご形神経系、腎管や爪のある付属肢の配置などの構造から、体節制を感じさせる。様々な知見により、有爪動物は緩歩動物、節足動物と共に汎節足動物を構成する。 それ以前には、節足動物に似た点が多いもののこのような点で異なることから、緩歩動物、舌形動物(五口動物)と併せて側節足動物という群にまとめられることもある。
環形動物の多毛類に似ている点として、付属肢が疣足状であること、平滑筋であること、生殖輸管や腎管に繊毛があることなどが挙げられる。かつては節足動物が環形動物から進化したと考えられたため、この両者をつなぐ位置にあるものと考えられたこともあった。しかし、節足動物と環形動物は別系統(脱皮動物と冠輪動物)だと判明して以降は、この仮説も否定的になった。
カンブリア紀の葉足動物は、外見的には有爪動物に類似するものが多く、系統的に近いものとして考えられた。特にハルキゲニアは、爪の構造は現生カギムシと同じく、奥から一層ずつ積み重ねる構造からなり、有爪動物との類縁関係を示唆する[1]。
現生種はすべてカギムシ目に属し、ペリパツス科とペリパトプシス科に分ける。ハルキゲニアなど、系統的に近縁な葉足動物を有爪動物として考えれば、現生種はすべて陸生である。だとすれば有爪動物は現存する動物門のうち、現生種が海産種を含まない唯一の動物門となっている。
†Xenusia綱(葉足動物#該当する動物群も参照)