dcsimg

ヤドリギ ( Japanese )

provided by wikipedia 日本語
ヤドリギ 363 Viscum album.jpg
Viscum album L.
分類APG III : 植物界 Plantae 階級なし : 被子植物 angiosperms 階級なし : 真正双子葉類 eudicots 階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots : ビャクダン目 Santalales : ビャクダン科 Santalaceae : ヤドリギ属 Viscum : ヤドリギ V. album 学名 Viscum album L. 和名 ヤドリギ
オウシュウヤドリギ 英名 mistletoe
European mistletoe
common mistletoe 亜種
  • 本文参照

ヤドリギ宿り木宿木寄生木)は広義にはヤドリギ類 (Mistletoe) の総称的通称だが、狭義には特にそのうちの一種、日本に自生する Viscum album subsp. coloratum標準和名である。

狭義のヤドリギ Viscum album subsp. coloratum は、セイヨウヤドリギ Viscum album英語: European mistletoe, common mistletoe)の亜種である。この項目ではViscum albumとその亜種について解説する。

なお、学名はラテン語により、「白い(album)宿り木(viscum)」の意。

従来はヤドリギ科に属すとされていたが、現在(APG植物分類体系)はビャクダン科に含められている。

特徴[編集]

ヨーロッパおよび西部・南部アジア原産。半寄生灌木で、他の樹木の枝の上に生育する。30-100cmほどの長さの叉状に分枝したを持つ。黄色みを帯びた緑色の葉は1組ずつ対をなし、革のような質感で、長さ2–8センチメートル、幅0.8–2.5cmほどの大きさのものが全体にわたってついている。花はあまり目立たない黄緑色で、直径2–3cm程度である。果実は白または黄色の液果であり、数個の種子が非常に粘着質なにかわ状の繊維に包まれている。

全体としては、宿主の枝から垂れ下がって、団塊状の株を形成する。宿主が落葉すると、この形が遠くからでも見て取れるようになる。

 src=
イギリスのヤドリギ

ヤドリギは多細胞真核生物としては初めてミトコンドリア複合体Iが完全に欠如し電子伝達系全体が変化していることが確認された生物である[1][2]

亜種[編集]

亜種は一般的に4種類まであるとされており、しばしばさらに2亜種が加えられる。それらは果実の色、葉の形と大きさ、そして最も特徴的には宿主となる木が異なる。

  • Viscum album subsp. abietis (Wiesb.) Abromeit — 中央ヨーロッパに分布する。果実は白、葉の大きさ8センチメートル。モミに寄生する。
  • セイヨウヤドリギ Viscum album subsp. album — ヨーロッパ、南西アジアからネパールにかけて分布。果実は白、葉は3–5センチメートル。リンゴ属ポプラシナノキ属、まれにコナラ属の樹木に寄生。
  • Viscum album subsp. austriacum (Wiesb.) Vollmann — 中央ヨーロッパに分布。果実は黄色、葉は2–4センチメートル。カラマツ属マツトウヒに寄生する。
  • Viscum album subsp. creticum — ベーリング (Böhling) らが近年クレタ島西部から報告した (Böhling et al. 2002)。果実は白、葉は短い。カラブリアマツ (Pinus brutia) に寄生。
  • ヤドリギ Viscum album subsp. coloratum Komar — 日本でヤドリギといった場合、主にこれを指す。『中国植物志』では別種 Viscum coloratum (Komar) Nakai として扱われる。

日本のヤドリギ[編集]

 src=
日本のヤドリギ(岩手県遠野市で)

日本のヤドリギは上記のようにセイヨウヤドリギの亜種とされる。基亜種の果実が白く熟すのに対し、淡黄色になる。まれに橙黄色になるものがあり、アカミヤドリギ f. rubro-aurantiacum と呼ばれる。宿主樹木はエノキ・クリ・アカシデ・ヤナギ類・ブナ・ミズナラ・クワ・サクラなど幅広いが、基亜種よりは多くない。

果実は冬季に鳥に食われる。キレンジャクヒレンジャクなどがよく集まることで知られる。果実の内部は粘りがあり、種子はそれに包まれているため、鳥の腸を容易く通り抜け、長く粘液質の糸を引いて樹上に落ちる。その状態でぶら下がっているのが見られることも多い。粘液によって樹皮上に張り付くと、そこで発芽して樹皮に向けて根を下ろし、寄生がはじまる。

文化[編集]

人類学 者のジェームズ・フレイザーの著作『金枝篇』の金枝とは宿り木のことで、この書を書いた発端が、イタリアのネミにおける宿り木信仰、「祭司殺し」の謎に発していることから採られたものである。古代ケルト族の神官ドルイドによれば、宿り木は神聖な植物で、もっとも神聖視されているオーク に宿るものは何より珍重された。

クリスマスには宿り木を飾ったり、宿り木の下でキスをすることが許される[3]

参考文献[編集]

 src= ウィキメディア・コモンズには、ヤドリギに関連するメディアおよびカテゴリがあります。
  • Böhling, N.; Greuter, W.; Raus, T.; Snogerup, B.; Snogerup, S.; Zuber, D. (2003). "Notes on the Cretan mistletoe, Viscum album subsp. creticum subsp. nova (Loranthaceae/Viscaceae)". Israel J. Pl. Sci. 50 (Suppl.): 77–84.
  • 佐竹義輔他編、『日本の野生植物 木本 II』(新装版)、(1999)、平凡社

脚注[編集]

  1. ^ Andrew E. Maclean, Alexander P. Hertle, Joanna Ligas, Ralph Bock, Janneke Balk, Etienne H. Meyer (2018). “Absence of Complex I Is Associated with Diminished Respiratory Chain Function in European Mistletoe”. Current Biology. https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(18)30365-8.
  2. ^ Jennifer Senkler, Nils Rugen, Holger Eubel, Jan Hegermann, Hans-Peter Braun (2018). “Absence of Complex I Implicates Rearrangement of the Respiratory Chain in European Mistletoe”. Current Biology. https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(18)30379-8.
  3. ^ デズモンド・モリス『クリスマス・ウォッチング』(扶桑社)の32,33に起源など詳しい。
 title=
license
cc-by-sa-3.0
copyright
ウィキペディアの著者と編集者
original
visit source
partner site
wikipedia 日本語

ヤドリギ: Brief Summary ( Japanese )

provided by wikipedia 日本語

ヤドリギ(宿り木 ・ 宿木 ・ 寄生木)は広義にはヤドリギ類 (Mistletoe) の総称的通称だが、狭義には特にそのうちの一種、日本に自生する Viscum album subsp. coloratum の標準和名である。

狭義のヤドリギ Viscum album subsp. coloratum は、セイヨウヤドリギ Viscum album (英語: European mistletoe, common mistletoe)の亜種である。この項目ではViscum albumとその亜種について解説する。

なお、学名はラテン語により、「白い(album)宿り木(viscum)」の意。

従来はヤドリギ科に属すとされていたが、現在(APG植物分類体系)はビャクダン科に含められている。

license
cc-by-sa-3.0
copyright
ウィキペディアの著者と編集者
original
visit source
partner site
wikipedia 日本語