Sulfolobus(スルフォロブス属、サルフォロバス属)は、陸上の火山や温泉などに広く生息する好気・好酸・好熱性の古細菌の一属である。
属名は、硫黄を好むこと、細胞表面に頻繁に突出部を形成することから、ラテン語で、硫黄(Sulfur;スルフル)+ 丸・耳たぶ、葉よう(希:lobus;ロブス)という意味になっている。
高温、低pH、硫黄に富む好気環境に分布する。比較的広範囲に生息する古細菌の一つで、世界中の温泉、火山、噴気孔、硫黄孔から分離されている。
採取や培養が比較的容易で、最初期の報告は1960年代末から1970年代初頭にかけてイエローストーン国立公園やイタリアにおいてなされた。Thermoplasmaと共に、1977年のカール・ウーズによる古細菌界提唱以前から知られていた数少ない好熱古細菌である。当初はペプチドグリカンを欠く珍しいタイプの細菌と報告された。
球形に近い不定形、大きさは2μmほど。細胞膜のコア脂質はテトラアーキオールであり、ほぼ完全な脂質一重膜になっている。細胞壁はS層(糖たんぱく質)であり、グラム染色では陰性である。鞭毛を持つ場合が多い。
生育温度は50-97°C、生育pHは1-6程度。至適増殖温度はおおむね70-85℃、至適pHは2-3の範囲にあるものが多い。既知のクレンアーキオータの中では最も好熱性が低いが、何種かは超好熱菌に属しており、同じような好熱好酸菌であるThermoplasma 属(ユリアーキオータ)よりは好熱性が高い(好酸性は低い)。
基質としては硫黄や硫化水素、あるいはアミノ酸や糖類を利用する。これらを酸化して独立または従属栄養的に増殖することができる。
好熱古細菌としては比較的扱いやすく、古細菌のDNA複製、細胞分裂、耐熱タンパク質の研究によく使用される。硫化水素を酸化することができるため、この処理に使われることがある。
単独の環状のゲノムを持ち、ゲノムサイズは2-3 Mbpの範囲にある。クレンアーキオータとしては比較的大きなサイズである。S. solfataricusは、単一の環状DNAを持つが、複製開始地点が1箇所ではなく3箇所あることが知られている。
ゲノムの解読は2000年頃から順次行われ、2001年にS. solfataricus P2(2,992,245 bp、ORF2977)とS. tokodaii strain 7(2,694,756 pb、ORF2825)、2005年にS. acidocaldarius DSM 639(2,225,959 bp、ORF2223)の全ゲノムが解読された。