シリアゲムシ目(シリアゲムシもく、Mecoptera)は、昆虫綱の目のひとつ。長翅目とも言われる。シリアゲムシやガガンボモドキを含む。世界で600種ほどの小さな群である。
細長い体に長い足を持つ、やや華奢な昆虫で、翅は二対とも膜状。ユキシリアゲムシは翅が退化して飛べない。
触角は鞭状。頭部は目がよく発達し、口はやや突き出して、先端に咀嚼型の口器をもつ。
胸部はまとまり、そのまま腹部に続く。腹部は柔らかく、細長くて後方に狭まる。シリアゲムシ類の雄では先端がサソリの尾のように反り返る特徴がある。
幼虫は肉食でイモムシ型。地表あるいは半地中、あるいは地中に巣穴を掘って暮らしている。
基本的には肉食で、昆虫などを捕えて喰うのであるが、果実なども喰う。シリアゲムシ類は飛び回りながらそのような餌をあさる。ガガンボモドキ類は前足で草などにぶら下がった姿勢から、後肢で獲物を捕らえることができる。
交尾の際に雄が雌に餌を与える例が多い。シリアゲムシ類では、自らは餌を与えることなく雌が摂食中に接近するものから未消化の餌を吐き出して与えるものまで様々な行動が見られる。ガガンボモドキ類については、雌に雄が餌をプレゼントするが、この間の行動に関しては動物行動学上の様々な問題にかかわる研究が行われ、行動生態学の進歩に大きく貢献した。
完全変態をする昆虫類の中では原始的特徴を強く残した一群である。化石も二畳紀から発見され、これは前記の群の中では最も早期の地層からの発見である。
シリアゲムシ科は日本に普通。ガガンボモドキ科は日本では寒冷な地域でのみ見られるが、欧米では普通。これらはいずれも翅があって飛び回る活発な昆虫である。ユキシリアゲムシ科は雪の上に出現するもので、翅が退化している。日本では長らく未発見であったが、20世紀末に北海道で発見された。