ユノミネシダ(Histiopteris incisa, 湯ノ峰羊歯)は、1875年に記載されたコバノイシカグマ科のシダである[2]。
常緑性の多年生草本[3]。根茎は長く伸びて横に這う。根茎は太くて径1cmを越え、暗紫色で光沢があり、幅の狭い鱗片がある。葉は間を置いて出て、葉柄も太いものでは径1.5cmを越えるものがあり、基部から脇外芽を伸ばす。葉の先端での成長が止まらないのでどんどん伸びて大きくなり、日本では2m程度であるが、熱帯域では蔓状に伸びて10mに達する例がある[4]。葉全体としては2回羽状から時に4回羽状になる。羽片、小羽片は対生し、羽片の基部の最下1対の小羽片は柄のない托葉状となる。羽片は長さ70cm、幅30cmに達し、小羽片は長さ20cm、幅7cmにもなる。葉質は草質で表面は鮮緑色、裏面は灰緑色となり、縁は裏面に巻く。裂片の形は様々。胞子嚢群は裂片の縁に沿って長く伸び、途切れないことが多い。
ユノミネシダ属には、ユノミネシダ(H. incisa)の1種のみが認められているが、他にいくつかが「未分類」として記載されている[5][6]。ユノミネシダの英名は、"Batwing fern"である[7]。
アジア、オーストラリア、アフリカ、南アメリカ、また様々な大洋島の熱帯から亜熱帯地域に分布する[8][9][10][11][12]。
日本では鉱山跡や温泉地に特異的に出現する[13]。 1887年に和歌山県の湯の峰温泉で発見されたが、この地は分布域の北限に当たり、この自生地は1920年に天然記念物に指定されている[14]。