スペアミント(spearmint)はハッカ属の植物である。古くからハーブとして用いられている。ペパーミントよりもハーブとして用いられた歴史は古い。聖書でハッカとされている植物はスペアミントの一種ともされるナガバハッカ(Mentha longifolia)とされている。なお、ペパーミントはスペアミントとウォーターミント M. aquaticaの交配種とされている。
草丈30-60cm程度の多年生草本である。葉は対生し、槍の穂先のような形(spearの由来である)で、ふちにのこぎりの刃のような形で切れ込みがある。葉脈はペパーミントと比較するとあまりはっきりしない。夏から秋にかけて茎の先端に長さ5cm程度の花穂(学名のspicata「穂状の」の由来)を伸ばし、そこに白から淡紫色の花を多数つける。不稔性であることが多く、地下茎により栄養繁殖する。
スペアミントと呼ばれる植物には以下のようなものがある。
しかしハッカ属は交雑しやすいこと、形質の遺伝が不安定であることから形態のみからの正確な分類は困難である。M. longifoliaはM. viridisの一変種であるとする主張もある。
ハーブとしてそのまま葉を紅茶や菓子などに添えて用いる。また精油を採取し、チューインガムや歯磨き粉のフレーバーに用いる。
主要な産地はアメリカ合衆国の五大湖沿岸西部(ミッドウエスト)および太平洋岸北部(ファーウエスト)である。アメリカにスペアミントを運んだのはピルグリム・ファーザーズであるとされているが、大規模な栽培はチューインガムなどの用途が開発されてから行われるようになった。最も精油の品質が良いとされる開花直前に地上部を刈り取って、水蒸気蒸留による精油の生産に用いられる。実生は親株とは異なる形質を持つことがしばしばあるため、増殖は地下茎の株分けにより行う。
スペアミントの栽培種としてはネイティブ種とスコッチ種があるが、ネイティブ種は霜害などに強い反面、香味の質や精油の含有量の点ではスコッチ種に劣る。そのため現在アメリカで栽培されているのはほとんどがスコッチ種である。
スペアミント精油はアメリカで年間約2000トンの生産量がある。植物体に対する精油の収率は0.6-0.7%である。主な成分は(R)-l-カルボンで60-70%程度を占める。次いで(R)-l-リモネンが多く10-20%を占める。リモネンは柑橘類から得られるものとはエナンチオマーの関係であるので、その供給源としても重要である。