シダ植物(シダしょくぶつ、羊歯植物、歯朶植物)は、維管束植物かつ非種子植物である植物の総称、もしくはそこに含まれる植物のことで、胞子によって増える植物である。側系統群であることがわかっている。
側系統群を認める分類では、シダ植物はシダ植物門として、ひとつの分類群にまとめられることもあるが、単系統群のみを分類群とする体系では、シダ植物門とヒカゲノカズラ植物門の2群に分かれる(加えて、トクサ植物門を独立門として置くこともあった)。
非単系統群であるが、共通する点も多く、ここでは、これらを総合して説明する。より一般的なシダについてはシダ綱を、それ以外については各群の項目を参照。
各シダ植物は、それぞれに性質の違う点もあるが、共通の性質はおおよそ次のようなものである[1]。
これらは、植物界にあって胞子体を発達させて維管束を持つようになった群のうち、種子植物以前の性質を共有するグループと言ってもよいものである。
陸上植物は車軸藻類と姉妹群の関係にある。陸上植物の中ではコケ植物がまず現れ、苔類、蘚類、ツノゴケ類の順に古い起源を持つ。維管束植物は、ツノゴケ類と同一の起源から進化してきたと考えられる。
初期の維管束植物は、茎が発達する一方で、葉の未発達な段階があったと考えられ、そこから小葉シダ類と大葉シダ類が別々に葉を発達させてきた。大葉シダ類からは、種子植物が現れる。小葉シダ類からヒカゲノカズラ植物門が生き残り、大葉シダ類からシダ植物門の各種が生き残った。
シダ植物門には樹木のような形態を取り、時に高木になるものが含まれる(木生シダ)が、それ以外の類はいずれも小柄な植物である。しかし、それぞれに古生代には大きな樹木のようになった先祖があり、いずれも多くの種を抱えていたとされる。したがって、現在の状態はいくつかの系統の、それぞれごく一部のものが小型化して生き延びた姿とも見られる。
下記の分類は、米倉(2009年)による[2]。
伝統的には、「シダ類」(Fern)は、葉を持つもののみを含め、近縁の種は「シダ様植物」(Fern ally)と呼んだ。前者には、真嚢シダ類と薄嚢シダ類とが含まれ、後者には、トクサ類、マツバラン類等が含まれる。シダ類とシダ様植物を合わせたものをシダ植物と言い、これらは言い分けられていた。
下記の分類は、加藤編(1997年)による[3]。
シダ植物の生活環は典型的な単複世代交代型であり、胞子体と前葉体の2期があり、それぞれが生活を営む。前葉体は雌雄同体(ひとつの体に造卵器と造精器を持つ)が一般的であるが、イワヒバ科や水生シダは雌雄異体である。この場合、胞子に雌雄の別がある。
名称 胞子体葉の構造は、大きく大葉と小葉に分かれる。前者は大きく広がった葉で、葉脈がその中で枝分かれする。シダ植物門のものと、種子植物はこれである。小葉は、小さく単純で、葉脈は主脈のみで枝分かれはない。ヒカゲノカズラ植物門のものがこれである。トクサ綱は当初は小葉であるとされたが、現在では大葉の1つと見られている。
シダ植物の茎は、ほとんどが肥大成長を行わない。維管束の配置は種子植物の真性中心柱(木部と師部のセットが同心円に並ぶ)ではなく、中心に木部、それを師部が囲むという原生中心柱か、その変形、あるいはそれが同心円的になった網状中心柱という形を取る。ただ、ハナヤスリ類だけで真性中心柱が見られる。
胞子をつける胞子葉と、栄養葉の間であまり変わらないものから、連続的に、極端に2型性を持つものまである。後者では、栄養葉の上に胞子葉が乗っかっているように見えるハナワラビや、胞子葉がそれと見て分かるイヌガンソク、シシガシラ、クサソテツなどが観察しやすい。
胞子嚢は、これらの植物の生殖器官である。基本的には柄を持つ嚢状の構造で、その内部に減数分裂によって胞子を形成する。この胞子嚢の形成の様式に大きく2つある。
シダ植物のほとんどは1種類の胞子を造り、それが発芽すれば、前葉体には卵と精子が形成され、受精が行われる。しかし、種子植物では花粉と胚嚢というように前葉体に雌雄の別があり、異なった部位で異なった形の胞子が形成されている。このような配偶体の明らかな二形性は、その元となる胞子の大胞子と小胞子の二形性に基づくものである。このような胞子の二形が見られるのは、現生のシダ植物ではクラマゴケ類、ミズニラ類と水生シダ類だけである。
一般のシダ類では前葉体は薄膜状で、ややゼニゴケを思わせる姿をしている。しかし、まったく異なった姿のものもいくつかある。やや異なった形のものとして、細長いリボン状やひも状のものがあり、普通のシダ類の一部に見られる。
シダ植物は維管束植物であり、いわゆる根・茎・葉があると言われる。しかし、この点から見直さねばならない例もある。
日本ではワラビ、ゼンマイ、クサソテツなど、山菜として利用されるものがいくつかある。その一部は、商品として流通するほど、広く利用される。ジュウモンジシダ、ナチシダなども食用とされることがある。東南アジアなどでは、オオタニワタリやミズワラビも使われる。ただし、それらの中には毒性を有するものも多く、ワラビなども生で摂取すると中毒症状が出る。可食とするためには「あく抜き」などと称する処理を行わなければならない。例えばブータンではイワデンダ科の Diplazium maximum やナチシダ、ランダイワラビなどを食用とする。これらはいずれも毒性があって家畜が食べない。そのために肥沃な放牧場にはこれらがよく繁茂し、地元民は良質な食材を入手できるというシステムが成立している[4]。
ヘゴなどの木性シダ類の幹やゼンマイ類の根塊が、洋ラン栽培など園芸用資材として利用される。
また、オオタニワタリなど、鑑賞価値の高いものは、古くから栽培されてきた。広くシダ植物の範囲では、イワヒバとマツバランが、日本では古典園芸植物として、江戸時代より栽培が行われた。ただし、そのための採取により、これらはその個体数が減少し、絶滅に瀕している地域もある。
シダ植物(シダしょくぶつ、羊歯植物、歯朶植物)は、維管束植物かつ非種子植物である植物の総称、もしくはそこに含まれる植物のことで、胞子によって増える植物である。側系統群であることがわかっている。
側系統群を認める分類では、シダ植物はシダ植物門として、ひとつの分類群にまとめられることもあるが、単系統群のみを分類群とする体系では、シダ植物門とヒカゲノカズラ植物門の2群に分かれる(加えて、トクサ植物門を独立門として置くこともあった)。
非単系統群であるが、共通する点も多く、ここでは、これらを総合して説明する。より一般的なシダについてはシダ綱を、それ以外については各群の項目を参照。