ツチクジラ属(槌鯨属、Berardius)は、鯨偶蹄目ハクジラ亜目アカボウクジラ科に属する属の一つ。ミナミツチクジラとツチクジラの2種が属する。
ミナミツチクジラ(南槌鯨、Berardius arnuxii、フランス語: Bérardie d'Arnoux、英語: Arnoux's Beaked Whale)はツチクジラ属に属し、南半球に棲息する大型のクジラである。
ツチクジラ(槌鯨、Berardius bairdii、Baird's Beaked Whale)はツチクジラ属に属し、北半球に棲息する大型のクジラである。
ミナミツチクジラとツチクジラはアカボウクジラ科の中では一番大きいクジラであり、ハクジラ全体ではマッコウクジラに次ぐ大きさとなり、大きさもほぼ同じで、外観も非常に似通っている。
そのため、一部の動物学者は同一の種が変異して別々の種に分かれたという説を唱えている[McCann(1975)]。
ミナミツチクジラは、ニュージーランドで発見された頭蓋骨に基づき、1851年、Duvernoyによって新種として報告された。 属名の Berardius は、この頭蓋骨をニュージーランドからフランスに運んだ船の船長であるBerardに由来する。 種小名の arnuxii および英名のArnoux'sは同船の船医Arnouxに由来する[www.cetacea.org]。
ツチクジラは、ベーリング海で発見された試料に基づき、1883年、Stejnegerによって新種として報告された。 種小名の bairdii および英名のBaird'sは鳥類学者・魚類学者でありスミソニアン博物館の副館長も務めたBairdに由来する。
和名のツチ(槌)は、頭部の形状が稲藁を叩く槌に似ているからとされる。
ツチクジラ属 Berardius
ミナミツチクジラとツチクジラの外観は非常によく似ている。 生息域が重なっていないため海上で識別する必要はないが、もしも生息域が重なっていたならば、識別は非常に困難になっていただろう。 身体の大きさは若干異なっており、ミナミツチクジラの方がツチクジラよりも少し小さい。 海上で観察された最も大きなミナミツチクジラの推定体長は12mであるが、標本として入手できているものはそれよりもかなり小さい。 一方、ツチクジラは成長すると12mから13m程度に達する。
両種とも、アカボウクジラ科の中でも比較的長い口吻を有する。 下顎が上顎よりも長く、口を閉じた状態でも下の前歯が見える。 頭部メロンは、アカボウクジラ科の中でも特に膨らんだ形状を持つ。 体型は細長く、胴回りは体長の50%程度に過ぎない。 体色はほぼ一色であり、個体による違いがあるが、明るい灰色から黒である。 胸びれは小さく、丸くなっている。 同じく背びれも小さく、丸くなっており、全長の3/4くらいの位置にある。 両種とも全身に白い引っかき傷がある。 この傷の個数は加齢とともに増えていくため、各個体の年齢の大雑把な見積もりに使用することができる。 また、両種とも性による外観の違いはほとんどない。
ミナミツチクジラとツチクジラの生息域は重なっておらず、完全に分かれている。
ミナミツチクジラは南極海に棲息する。 ニュージーランドやオーストラリアの海岸への座礁が少なくないことから、これらの国の南部海域から南極大陸までの海域においては、比較的一般に棲息しているものと考えられている。 サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島や南アフリカ、ニュージーランドなどにも棲息しているため、南極海の広い海域に棲息していると考えられている。 また最北端の座礁の報告例は南緯34度であるため、極地に近い寒冷な海域だけではなく、温暖な海域にも棲息すると考えられる。
一方、ツチクジラは北太平洋、日本海、オホーツク海の南部などに棲息する。 大陸棚の端近くの沿岸側あたりを好むと考えられている。 北限はベーリング海、南限は東側はバハ・カリフォルニア半島、西側は小笠原諸島である。
ミナミツチクジラの全生息数は不明である。 ツチクジラの全生息数の見積もりは3万頭オーダーである。
ミナミツチクジラの生態はほとんどわかっていないが、ツチクジラに似ているものと考えられている。
ツチクジラは、通常は3頭から10頭程度の群を成して行動するが、稀に50頭程度の群が観察される。 群の構成は良くわかっていない。 雌の方が雄よりも若干大きいので、捕獲の困難さに雌雄の差がないならば、雌の捕獲頭数の方が雄よりも多いことが予想されるのだが、実際には全捕獲頭数の2/3が雄であるため、調査捕鯨の結果からも群の構成は良くわかってはいない。
主な餌は魚類、頭足類などである。潜水深度は千メートル近くになり、深海性の大型のイカを捕食する事もある。
近年、複数のストランディング個体の解剖や目撃情報等の資料が得られた結果、北海道沖(知床半島および網走沿岸)を含むオホーツク海にツチクジラの別種と思われる鯨類が生息する事が判明した[1][2][3]。これらのクジラは既知のツチクジラ属よりもかなり小型で体長は6〜7mほど、黒味が強い体色などが特徴とされ、沿岸性であることが予想される[4]。地元の捕鯨業者には代々「クロツチ」あるいは「カラス」と呼ばれていた。遺伝学的研究によると当種は既存のツチクジラ属2種とは異なる遺伝グループに属し、本種を加えるとツチクジラ属には3つの遺伝グループが存在することになる。 "キタトックリクジラ" は旧ソビエト連邦時代にオホーツク海で報告されており(キタトックリクジラは北大西洋にしか生息しない)[5]、「上下の顎に4本の牙を持つツチクジラ」は、日本の伝統捕鯨で記録されていた[6]。これらの記録が、存在が判明しつつある未知のツチクジラ属と関連しているかは不明である。
ミナミツチクジラは捕鯨の対象となったことはない。 不明な点もあるが、おそらく絶滅の惧れはあまりないものと考えられている。
一方、ツチクジラは、20世紀、主に日本によって捕鯨の対象になっていた。 日本は1986年の商業捕鯨モラトリアムまでに約4,000頭を捕獲した。 最も多いのは1952年の年間300頭であった。 ソ連、カナダ、アメリカも頭数は少ないが捕鯨を行っていた。 ソ連は1974年に捕鯨を中止するまでに176頭のツチクジラを、カナダ、アメリカは1966年に中止するまでに60頭のツチクジラをそれぞれ捕獲した。
現在日本は、自主規制による頭数制限(ツチクジラはIWCの管轄外)に従ってツチクジラを捕獲しており、その肉は日本の市場で流通しており、ミンククジラよりも多い。現在行われている程度の捕鯨頭数が種としての存続を脅かすことはないと考えられている。
千葉県、房総半島南部の特産品としてツチクジラの肉から作られる鯨のたれが有名である。
IUCNの2006年版レッドリストでは、両種とも「低リスク-保全対策依存」 (LRcd : Lower Risk - Conservation Dependent) に分類(1996年)されている。
近年、房総沖での発見・捕獲が困難になってきているとされるが、捕鯨の影響による個体群の減少なのか分布の変化なのかは不明とされる。同様に、浮島を始めとする東京湾では近年確認されている限りではストランディング個体のみのであり、相模湾や伊豆大島周辺でも確認が少なくなってきている。また、日本海では捕鯨の影響が暫く無かったため、人懐っこい個体が増えてきたとも言われるが、近年再開された捕鯨業が行動にどのような影響を及ぼすかは不明である。
食料として見た場合、ツチクジラの体内に含まれる微量の水銀に注意する必要がある。 厚生労働省は、ツチクジラを妊婦が摂食量を注意すべき魚介類の一つとして挙げており、2005年11月2日の発表では、1回に食べる量を約80gとした場合、ツチクジラの摂食は週に1回まで(1週間当たり80g程度)を目安としている[7]。
木白による資料に基づく日本のツチクジラ捕鯨の推移である。
ツチクジラ属(槌鯨属、Berardius)は、鯨偶蹄目ハクジラ亜目アカボウクジラ科に属する属の一つ。ミナミツチクジラとツチクジラの2種が属する。
ミナミツチクジラ(南槌鯨、Berardius arnuxii、フランス語: Bérardie d'Arnoux、英語: Arnoux's Beaked Whale)はツチクジラ属に属し、南半球に棲息する大型のクジラである。
ツチクジラ(槌鯨、Berardius bairdii、Baird's Beaked Whale)はツチクジラ属に属し、北半球に棲息する大型のクジラである。
ミナミツチクジラとツチクジラはアカボウクジラ科の中では一番大きいクジラであり、ハクジラ全体ではマッコウクジラに次ぐ大きさとなり、大きさもほぼ同じで、外観も非常に似通っている。
そのため、一部の動物学者は同一の種が変異して別々の種に分かれたという説を唱えている[McCann(1975)]。
ミナミツチクジラは、ニュージーランドで発見された頭蓋骨に基づき、1851年、Duvernoyによって新種として報告された。 属名の Berardius は、この頭蓋骨をニュージーランドからフランスに運んだ船の船長であるBerardに由来する。 種小名の arnuxii および英名のArnoux'sは同船の船医Arnouxに由来する[www.cetacea.org]。
ツチクジラは、ベーリング海で発見された試料に基づき、1883年、Stejnegerによって新種として報告された。 種小名の bairdii および英名のBaird'sは鳥類学者・魚類学者でありスミソニアン博物館の副館長も務めたBairdに由来する。